マンション大規模修繕工事は少なからず住民に負担が強いられます。できる限り普段通りの生活を続けてもらうためには、施工会社や管理会社からのこまめな情報共有がかかせません。
ここでは、実際住民に対して十分な情報共有が行われなかった結果、工事が中断するほどの問題にまで発展した事例を紹介。
対策も併せて掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
このマンションは5階建て約240戸。築10年目で最初の大規模修繕工事をすることは決まっていたところ。調査設計など一連の修繕計画はコンサルタント会社の協力のもと、進行していました。
しかし、調査・設計を経て施工会社の選定を終えたところ、管理組合の判断としてコンサルタント会社を解約するに至ったのです。
理由は、コンサルタント会社の技術的スキル不足。管理組合側も特定人物が解約を強く訴えたということではなく、後は実際に着工するというタイミングで、やむなく解約に踏み切ったということのようです。
そして、別のコンサルタント会社に、大規模修繕工事の工事監理だけを改めて発注、施工をスタートすることになりました。
トラブルが起こり始めたのは大規模修繕工事が始まってからのこと。マンション住民からの質問や意見が日毎に増えていく状況で、施工会社の現場代理人は住民対応に多くの時間を割かなくてはならなくなったのです。
質問はその多くが工事内容の基本的事項に関するもの。 工事部位や塗装のカラーリングなど、専門知識がないと理解しにくいような内容ではありません。意見あるいは要望としては、工事箇所や優先順位に関するものもあり、これはマンション住民個々に違うため、説明が必要というより説得しなくてはならない状況。現場代理人も疲弊してしまい、工事を中断するに至りました。
この失敗事例の原因は、工事内容を決めるまでのプロセスにおいて、施工情報公開や住民に対する広報が十分にできていなかったこと。説明会や総会で修繕工事の報告はしていたものの、マンション住民の理解が得られていたわけではないようです。
そのような状況のまま着工してしまったことで、いよいよ住民からも声が上がり、対立による住民トラブルになる始末。個々の質問や意見に個別対処するのではなく、改めて工事説明会を実施して、住民からの意見をヒアリングするところまで、工程が戻ってしまいました
管理組合の説明や情報開示が足りていなかったのは問題ですが、計画段階で携わっていたコンサルタント会社から、大規模修繕工事の説明会や工事内容の告知が重要であることのアドバイスもなかったとのこと。専門家でもない管理組合や修繕委員会のメンバーには同情の余地もあるでしょう。
コンサルタント会社・施工会社ともに信頼できる業者なら大規模修繕工事のクライアントでもある管理組合や修繕委員会をしっかりサポートしてくれるもの。マンション住民への説明や対応についてもサポートしてくれる業者か、選定段階で比較項目に入れておくといいでしょう。