ずさんなマンション工事はすぐ気付くものではありません。最悪の場合、数十年後に施工不良があったことに気付くこともあるのです。ここでは、実際にあった施工不良の事例とその対策について紹介しています。
全体戸数は約240、8階建てで築21年目に2回目の大規模修繕工事を実施すべく専門業者の選定を進めていく中で、トラブルが判明した事例を紹介します。
このマンションの外壁はタイル貼り。2回目の大規模修繕工事に向けた建物調査の中で、打診調査を実施。その際、調査範囲は仮設設備を使わないで、歩行可能な範囲のみ打診したところ、タイルの浮き不良は築年数相応のもの。1回目の大規模修繕工事における施工は評価できるものという調査結果でした。
ところが、後日実際に足場を架設して、妻壁や高所、そして見えにくい箇所まで詳細にチェックしたところ、これらの箇所にはタイル浮きが多数あることが判明。さらに調査を進めていったところ、1回目の大規模修繕工事は、一部を除いてタイル浮き注入工事がずさんだったことがわかったのです。その施工は削孔のみで、接着材を注入せず蓋をしている箇所が多数見つかったのです。
1回目の大規模修繕工事からは10年ほど経って、別な施工会社が2回目の大規模修繕工事に着手しようという段になって、初めて判明した1回目の工事における手抜き作業。この原因は、設計監理をせずに1回目の大規模修繕工事を行ったことにあります。
施工内容及び施工品質をディテールまでチェックする体制ができていれば見抜けた可能性も高く、そうした体制であれば施工会社もあからさまに手抜き工事はできなかったともいえます。
診断の結果、目につく箇所はちゃんと接着材を注入固定している一方、見えにくい箇所や足場がないとチェックできない箇所はほとんど注入固定されていなかったとのこと。施工会社は最初から目につく箇所だけちゃんと工事しておけばいいだろうとタカをくくっていた可能性が高そうです。その分、安価な見積もりに騙されたのかというと逆で、2回目の大規模修繕工事の試算と比べて、1回目の方が約2割も高い費用を支払っていました。
マンションの管理組合の中に大規模修繕工事の専門家がいるケースを除けば、施工品質をチェックするという意味でやはりコンサルタント会社のサポートを受けるのが定石。いわゆる設計監理コンサルタント方式で修繕計画を進めていく方がコンサルタント会社に対するコストは発生するものの、リスクマネジメントまで加味した時、十分な費用対効果が見込めると思います。
同時に、施工会社の選定にあたっては、信頼できる業者を選ぶことが重要。ここで取り上げた施工会社の場合、技術力は足りているのかもしれませんが、モラルには欠けているといわざるを得ません。取引前の企業に対する信頼度はわかりにくいともいえますが、大規模修繕工事の元請け工事実績が長年にわたって多数ある企業なら、多くのマンション管理組合から高く評価されているともいえるでしょう。